漫画家、作家、学生に大富豪 … フランス人はベルギーが好き?
ベルギー在住フランス人総数 12万人。2016年の統計によると在 ベルギー外国人のうちイタリア人 に続く第2のグループ。そしてそ の数は増え続けている。
フィリップ・ベルコヴィッチ (Philippe Berkovici)、シルヴァ ン・サヴォア(Silvan Savoia)、マ ルゼナ・ソワ(Mazerna Sowa)、 ヤン・ルペヌティエ(Yann le Pennetier)といえば知る人ぞ知 るフランス語漫画界の大物作家達。彼らの共通点は、‘Dargaud’ や‘Dupuis’、‘Glenat’といった パリの大手出版社から作品を発 表しつつ、生活の拠点はブリュッ セルに置いてゆったりとしたベル ギーライフを謳歌している、とのこと。
「ブリュッセルは、一国の首都とし ての機能から文化的要素まです べてを備えつつ、大都市につきも ののストレスを感じさせないところ が素晴らしい。そして市民が外来 者に対して寛容だ。」と彼らの住 み心地への評価は高い。
ベルコヴィッチは漫画雑誌の老 舗「スピルー」誌を支える売れっ 子作家のひとり。ブリュッセルの 異種雑多な建築様式が自分の作 品の描画スタイルとよくマッチしていると言う。
サヴォアは北フランス のランス生まれだが、ブリュッセル の有名なアートスクールSt.Lucに 学んだ。数年前、パートナーで ポーランド人漫画家のマルゼナと共にブリュッセル定住を決めた際の理由は「フランス語が公用語で 家賃の高すぎない街」。「ランスは 街として小さすぎるし、パリは生活費が高すぎる、それにベルギーは自国ポーランドとも似ている。」 とマルゼナ。「両国とも寒い気候 だが人々が暖かい」のだそうだ。 また、この街の気取らないコスモ ポリタンぶりが心地よい、と二人は 口を揃える。多種多様な民族と文 化のミックスが、芸術家の創造性 に栄養を与えてくれる、みんなが それぞれの個性を持ち、『隣人と は違うのが普通』という感覚が、生活の中でも芸術の面でも大ら かで暖かいものを導きだしてくれ る、とブリュッセルを高評価。
また、南仏マルセイユ出身でブ リュッセル在住20年以上のルペヌティエに言わせると、パリは美しい街だし建築の観点からもブリュッセ ルよりもずっと整っているが、あそ こはもう観光客に乗っ取られた 街。その点、ブリュッセル市民は しっかりと自分たちの街を守って いる。彼の仕事場は街中のカフェ。オフィスワーカーが会社に 出勤するように、彼はカフェに出 勤する。「これがフランスだったら 1時間も座っていられない。すぐ 追い出されてしまって、仕事どこ ろではない…」。
ベルギーに惹かれて北上してくる芸術家は漫画家だけではな い。ベストセラー作家エリック‐エ マニュエル・シュミットを始め、パリ の芸能人たちがブラバン・ワロン 地方の森に囲まれた邸宅に秘か に居を構えているらしい、という噂 はあちこちで聞かれる。 また、若者の世代では、キネジ セラピストや獣医の資格を取りにやって くる学生があとを絶たず、フランス 人の入学人数を制限する学校も 出ているらしい。
通勤の面でも高速列車タリスのお陰で今やパリは目と鼻の先。大 都会の喧騒を避けてブリュッセル にゆったりと居を構え、パリに通 勤するフランス人の数は、朝夕の タリスの混雑具合からも推測でき る。パリ郊外のイル・ド・フランス地 方に住んでも、ここ隣国の首都ブ リュッセルに住んでも、通勤時間 は変わらない時代になっている。
そして忘れてはならないフラン ス人国境越えのもうひとつの大きな理由は経済的なもの。1980年 にミッテラン大統領が財産税 (ISF)を再施行して以来、この税 を逃れようと国外に富を移動する フランス人富裕層は多い。 Halley一族(カルフール・グルー プのオーナー)を始め、Mullier 一族 (Auchanスーパーチェー ン、デカトロン、Leroy Merlinな どのオーナー)、ファッション界の 大御所ヴィトン一族や化粧品大 手のゲラン一族の子息など、名 前を挙げるときりがない。彼らフラ ンス億万長者のベルギーでの落 ち着き先はというとUccleや Ixellesの高級住宅街がメインらし い。また、フランス国境近くの Mouscronも人気スポットだとか。
ベルギーにいれば財産税を取ら れないだけでなく、贅沢品税も贈 与税もフランスに比べると破格に 安いのが彼らにとっては魅力なのだろう。
“フランス人はベルギーが好き?” への1件の返信